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ネットショップの在庫管理どうしてる?【スプレッドシート初級編】

早川朋孝 早川朋孝
EC専門のSE

「初めてネットショップをやることになったけど、在庫管理方法がぜんぜん分からない」という方や「スプレッドシートでどこまで在庫管理ができる?」という方に向けて在庫管理の考え方と在庫管理表のサンプル、そして絶対にやってはいけない注意事項をお伝えします。

目次

  • 在庫管理の目的
  • 在庫管理におすすめのツール
  • エクセルの手書き在庫管理が危険な理由
  • スプレッドシートで在庫管理をする際の注意点
  • 在庫管理表のサンプル

在庫管理の目的

ネットショップ運用において在庫管理は最重要の業務といえます。その目的は利益の計算にあります。正確な在庫を把握して、利益の計算や発注のための判断材料にするためです。書くのは簡単なのですが、多くの小売業者はこの在庫管理に悩まされます。複式簿記における帳簿上は、在庫は「繰越商品」といって「資産」の扱いです。売れ残りも「資産」なのです。しかし動かない在庫は現実には資産でもなんでもありません。年々繰り越し商品が増えていくと経営者にとってはかなりのプレッシャーとなります。理想は常に在庫が回転していて、繰り越し商品が少ない身軽な状態です。

この商売の継続の判断に必要なのが在庫数の把握なのです。そこでエクセルに詳しい人ならCSVで作業すればいいと安易に考えがちなのですが、集計を手作業ですると時間がかかり面倒で、間違えも発生します。手作業での集計を長年続けると、誤差が積みかさなって危険な経営判断する可能性があるため、間違いは極小にする必要があります。

機械的に処理できていれば、月ごとの商品別の販売集計などの複雑なデータも正確に把握できます。例えば、あなたの商売の繁忙期が12月だとして、去年やおととしの12月の販売データがあれば、発注の参考にできます。そういったデータは過剰発注や販売機会損失を減らすための大事な判断材料となります。

ここでのポイント

  • 正確な在庫把握が必要
  • 手作業だと間違えが蓄積していく
  • 商品別の売上がどれくらいか機械的に処理すべし
  • 在庫把握は経営判断に重要

在庫管理におすすめのツール

あつかっている商品数やSKU数によっておすすめツールは大きく左右されます。以下に商品数と、それに対応する現実的に在庫管理が可能なツールをまとめます。ご自身の商売の大きさや、将来どのように拡張していくかを踏まえて選ぶといいでしょう。

商品数 おすすめツール
0〜100件 エクセル、スプレッドシートなど
100件〜3000件 スプレッドシート
3000件〜1万件 ネクストエンジン、クロスモール、BOSSなどの在庫連携システム
1万件以上 在庫連携システムに加え自社の基幹システム

エクセルの手書き在庫管理が危険な理由

一人ECで小規模のネットショップ運用をする場合、最初はなるだけお金をかけずにエクセルで在庫管理をしたいと考えるのは自然なことだと思います。例えば、RSLやFBAの在庫を把握するために、CSVで定期的にダウンロードしてエクセルで管理するのは、面倒ですが可能ではあります。ただし、手元のエクセルの在庫を楽天やAmazonに反映されるのは危険なので基本的にやるべきではありません。ほぼ確実にずれるからです。

例外的にエクセルでの在庫管理が許されるのは、例えばこんな状況です。

取り扱い商品が数点で、それぞれ在庫が1000個くらいあるとして、楽天やAmazonに出品するのは各商品につき300個ずつくらいでいい。たまに売り切れもいいからゆるめで在庫をアップしていけばいいや。

これくらいゆるいネットショップ運用なら、エクセルでの在庫管理で問題ありません。実際そういう人はいます。ただし、もしあなたがここまで緩くないなら、エクセルでの在庫管理はやるべきではありません。一つの商品の在庫を多店舗で共有している場合、例えば楽天で売れたら自社ECでも引くというような場合、手元のエクセルで管理していると、漏れがあったり、見落としたりでほぼ確実に間違えます。

スプレッドシートで在庫管理をする際の注意点

一人ECを多店舗を運用する場合でかつネクストエンジンなど在庫管理システムを使わない場合、現実的にスプレッドシートを採用する場合が多いです。スプレッドシートは無料で使えるのに加え、GASなどとの連携も相性がいいので業務に使っているネットショップは多いです。便利ですが、注意事項もあります。以下は必ず守ってください。

  • 閲覧権限に注意
  • スプレッドシートで扱う商品数は5000点くらいが上限

閲覧権限に注意

スプレッドシートの権限には「制限つき」と「リンクを知っている全員」があり、さらにユーザーごとに「閲覧者」「編集者」の二つの権限があります。特にリテラシーが低い人がしがちなのは、「リンクを知っている全員」が設定されているスプレッドシートで秘匿情報を扱ってしまうミスです。これは目も当てられません。スプレッドシートのurlは例として以下のようなものです。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/8iErFe2Q2kOdTr_kVbkw00ZZ8jAclcrp9P2AnVxWqmPX

こんなの複雑なurlなら、知らないとアクセスしようがないと思いますが、そう考える人はネットの闇を知らない人です。インターネットは悪意の巣窟であり、悪意を持った人はプログラムを使って乱数を作成し、自動でスプレッドシートにアクセスしようと試みます。24時間休みなくそういうプログラムが動いているのです。私は自作のアプリをウェブ公開した際、そういう攻撃プログラムの痕跡をログで数え切れないほど見てきました。閲覧権限には十分注意しましょう。

特に、EC運営が軌道にのってきて外部委託などで作業者や扱うスプレッドシートの数が増えてくると、管理しきれなくなります。外部の人に編集権限を与え、その人が辞めた後でも編集権限が残ったままとか、その人が誤って無関係の人に権限を与えてしまうとか、十分起こり得ることです。悪意あるなしに関わらず、事故は起きる前提でネットショップの運用を設計しないといけないのです。

スプレッドシートで扱う商品数は5000点くらいが上限

ネットショップが軌道に乗ってくると受注や在庫や外部への発注情報などスプレッドシートが際限なく増えていきます。商品数が少ないならいいのですが、だいたい私の経験上5000点前後になると、スプレッドシートの動作が極端に遅くなり業務に深刻な影響が出始めます。5000点扱う規模になると、他のシートを参照したりかなり複雑な運用をしている可能性が高く、作業者も多いです。誤操作やクラッシュしたら一貫の終わりです。データの多寡に関係なく、スプレッドシートのバックアップは必ず定期的にとりましょう。

在庫管理方法のサンプル

最後に在庫管理表のサンプルを提示します。ファイルをダウンロードしてご確認ください。見て分かる通り、縦軸に商品情報を、横軸にモールごとの売上を掲載するというパターンがで管理するネットショップが多いです。ネットショップの在庫管理は「絶対これが正しい」というような唯一の方法があるわけではないので、必要に応じて掲載項目や書式を修正して使うといいでしょう。

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このブログを書いてる人
早川 朋孝 EC専門のSE
IT業界歴20年のエンジニアです。ネットショップ勤務で苦労した経験から、EC・ネットショップ事業者に向けて、バックオフィス業務の自動化・効率化を提案するSEをしています。
Web運用の経験もあり、アクセス解析、広告運用が得意で、広告APIとプログラムとの合わせ技で並の広告代理店にはできない提案が可能です。
プロフィール
EC業務のDxの相談のります
趣味は読書、ピアノ、マリノスの応援など

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