去る10/27日、アメリカのトランプ大統領が来日した。このカオスをもたらす大統領の政策に対して、以下のように嘆く人がいる。
アメリカは自由の国だ。可能性に満ちあふれた素晴らしい国だ。そんなアメリカにとってサイコパスでしかないトランプのような人が大統領になったのは青天の霹靂だ。これは嵐のようなものだから、トランプが退任するまでおとなしくしていよう。トランプ退任後はトランプ関税もなくなるだろう。
この見方は楽観的に過ぎる。結論を先に書くが、トランプ大統領の退任後もアメリカは関税政策は続け、もっと強化される。越境ECをしている事業者は、アメリカの関税は常態化したことを前提に事業計画を立てないと、この先苦労するだろう。この根拠を以下に書く。
トランプ退任後もアメリカは関税は続ける根拠
- トランプ大統領のような人物が二度も選ばれるのは偶然ではない
- GAFAMなどがいくら稼ごうとも、関わる人数が少なく富の偏在は明らか
- 世界各国で排外主義を主張する政党が得票している
- トランプ関税で生活は変わらないどころか悪化する
トランプ大統領のような人物が二度も選ばれるのは偶然ではない
トランプ大統領のような、事実を無視して下品で知性のないサイコパスな人物が二度も選ばれるのは偶然やアメリカ人の気まぐれなどでかたづけられることではない。そのような人物を選ぶ人たちがたくさんいるという事実を冷静に捉えないといけない。
そういう人たちは生活が苦しく現状に満足していない。彼らには世界中の良質な商品を自国のドルで買える有利さを自分たちが持っていることなど関係がない。彼らは昔のアメリカは偉大だったとかつての栄光に浸っていて、それはもはや心の問題であり、その心の問題を共有していない外部の人が客観的な事実や数字で関税の不利益を説明しても意味をなさない。
GAFAMなどがいくら稼ごうとも、関わる人数が少なく富の偏在は明らか
アメリカの強みであるIT産業、例えばGoogle、Amazon、Apple、Faceboo、マイクロソフト、エヌビディアなどのような会社がいくら稼ごうとも、かつてのアメリカで栄えたGEなどと比較すると、IT産業に関わる人数は少なく富の偏在は明らかである。先進IT企業がどれだけ儲けようと、トランプ大統領の支持層に無関係である。
ちなみにGAFAMのトップ企業が稼ぐ金額は、日本の上場企業すべての時価総額より高い。それだけ稼いでいるのだ。アメリカ経済は強いのである。しかし、トランプ大統領の中核的な支持者である労働者にはIT企業などの非製造業がいくら稼ごうが無関係なのだ。トランプのいう「MAGA」とは、ものづくりにおいてアメリカを偉大にしようとするものであり、自身の支持層の仕事を増やそうとしているのだ。そして、繰り返すが、そういう意図を持った人物が二度も選ばれたのである。
したがって、アメリカ以外の国で製造されたものに関税をかけて、アメリカ国内の製造業を強くしようというのがトランプ大統領の狙いだ。思いつきでやっているわけではないのだ。そしてその政策を支持する人たちが一定数いるのだから、こうやって考えていくと、アメリカがトランプ退任後も保護貿易を継続すると考えるのは妥当だろう。
世界各国で排外主義を主張する政党が得票している
アメリカ、フランス、ドイツ、そして日本でも、世界各国で自国優先を主張する政党が支持を増やしている現実を見ると、世界的な傾向として保護主義の傾向が強くなっているのは明らかだ。GAFAの暴走など今までが自由貿易主義によりすぎていたことを考えると、バランスをとる力が働いていると思われる。
トランプ関税で生活は変わらないどころか悪化する
トランプ関税によって、仮に世界各国からアメリカ国内への工場進出が増えてアメリカ人の雇用が増えるにしても、一朝一夕でできることではなく、そうなるまでに相当な時間がかかると予想される。また関税によって今まで買えていた値段より商品は高くなり、アメリカの生活者の負担は増える。そうなるとアメリカの生活者はもっと苦しくなる。まともな人なら不利益のほうが大きいから関税を下げろと主張するだろうが、トランプ大統領のような事実を無視する人は「関税のかけ方が足りないし、他国のアメリカへの投資が足りない」と主張し、支持者もそれに賛同する。このようにして、トランプ関税は強化されていく。
最後に
今までアメリカに対しては関税がないのが当たり前だったが、関税がかかるようになった。新聞でトランプ相互関税の記事を見るたびに「これは大変なことになった」と思うこともあるし、そう感じる人は多いだろうが、この変化をチャンスと捉えて迅速に対策をすれば、文句ばかり言っている人に先んじることができる。変化はチャンスだ。




