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『明日の広告』佐藤尚之著 伝えることの難しさを優しく説く名著

早川朋孝 早川朋孝
ECコンサルタント

『明日の広告』は2008年に発売されたもので、いま読んでも古さをまったく感じない。

私自身がいまマーケティングで壁に当たっており、そのヒントを求めてむかし読んだ『明日の広告』を再び手にとってみた。

もう一度書くが、AI時代のいま読んでも古さを露ほども感じない内容だと思う。本書はインターネット時代のコミュニケーション論を主題としており、自分を売り込みたい人はもちろん、自社の商品やサービスを売ることに関わっている人たち、例えばマーケティング担当者、広告運用代行業者、ネットショップ運営者、営業成績が悪い営業担当者、開業を検討中の人、社内コミュニケーションに悩むチームリーダーや経営者などにとって有用な書だ。

この記事では『明日の広告』を再読してみて改めて気付いたことを整理してお伝えする。本書は、特にマーケティングとか営業に課題を抱えている人が自分のビジネスにどう活かすかという意識を持ちながら読めば、きっと助けとなるだろう。

目次

  • 本書の背景にあるもの
  • 変わらない本質
  • マーケティングの教科書として読める

本書の背景にあるもの

最初に『明日の広告』が書かれた背景を探ってみよう。著者の佐藤尚之さんは本書が書かれた時点で広告代理店に22年の勤務経験がある。コピーライターやCMプランナーとして活躍してきたが、インターネットの登場という大きな変化に直面した。それまでは、大量消費時代にCMで商品を流せば売れる時代が長く続いていたのだろうが、その手法が通じなくなった。その危機感が著者に本書を書かせた動機だろう。

それは「はじめに」の冒頭で「変わらなきゃ」という昔の日産のキャッチコピーを引用していることから明確に分かる。テレビCMを流すだけで商品が売れた時代があったなど、今の若いZ世代やもっと若いアルファ世代には想像もつかないだろうけど、そういう時代があったことを私もぎりぎり知っている世代だ。たしかに昔のテレビCMには今とは比較にならないくらい大きな力があった。

本書はそんな時代がネットの登場で過去のものになったのだから「伝える側にいる自分たち自身が変化しないと生き残れないよ」と著者が同業者に奮起を促す啓蒙書であるが、同時にまた著者の広告への愛情も隠されることなく伝わってくる。そして著者は伝えることが大好きなのだ。

例えばこんな感じだ。

そして、商品が好きだったボクたちは、広告も大好きだった。

商品や広告が無条件に「モテていた」時代のコミュニケーションだったのだと思う。消費者の情報処理能力も今とは比べものにならないくらい低かったし、広告で得られる情報をみんなある程度信じていた。送り手側もそんな消費者を信じて発信していた。CMはトイレタイムと言われ、邪魔なものという認識もあったが、今と比べるとなんだかんだ言ってやっぱり見られていた。

『明日の広告』 p55

著者はコミュニケーションに敏感な人だ。広告業界の最前線にいて、大衆向けにおおざっぱな広告を出すだけでは商品は売れなくなったことを肌で感じたのだろう。インターネット登場後の消費者とのコミュニケーション、すなわちもっと細やかにコミュニケーションをとらないと、何も伝わらないよという著者の主張は、今でもそのまま通用する。

変わらない本質

著者は『明日の広告』の中で、広告でメッセージを届けることを意中の相手にラブレターを渡すことに例えている。著者のこの比喩はインターネット登場後の広告の難しさを絶妙なゆるさで平易な表現に置き換えているから、するする読んでしまう。広告業界に長く身をおいてきた著者のことだから、伝えることの本質をずっと考えてきたのだろう。

インターネットの登場で、昔は読まれていたラブレターが読まれるどころかそもそも相手に届かなくなり、手渡して捨てられるとかでもなく、そもそも相手に届かない状態になったと主張する。これはつらい。

本書で書かれている消費者にメッセージを届ける方法は、発売から18年経った今も変わらない。第二章「広告はこんなにモテなくなった」では以下のようにまとめている。

  • ラブレターが相手の手に届きにくくなった。
  • 楽しいことが山とあり、相手はラブレター自体に興味をなくしている。
  • ラブレターを読んでくれたとしても、口説き文句を信じてくれなくなった。
  • しかもラブレターを友達と子細に検討し、友達に判断を任せたりすつ。
  • 『明日の広告』 p83

『明日の広告』はマーケティングの教科書として読める

『明日の広告』は広告運用やマーケティングの教科書として読める。上述の通りラブレターの比喩や、インターネットは商品の真の姿を映し出す「ラーの鏡」だ(ドラゴンクエストに登場する真実を照らしだすアイテム)と例えるなど、先に読ませる工夫が随所に見られる。本書の内容はもとより、本書のあり方がマーケティングや伝えることのお手本なのである。

新書なので気軽に読めるし、今ならメルカリやブックオフなどで簡単に安く手に入る(著者や出版社にはお金が届かないのが残念だが)ので、教科書としてはコスパ抜群だろう。本書は以下のような人にとりわけに有用だろう。

  • これから初めてネット広告を運用する人
  • 自店舗のチラシを出してみようと検討中の人
  • 社内や社外とのコミュニケーションに悩んでいる
  • これからサービス業やネットショップを始めたい人
  • 会社やチームの若手にコミュニケーション論を勉強させたいリーダー
  • 営業で成果が出ない人

本書には「情報洪水」や「賢い消費者」などの表現が出てくるが、これらの概念は本書の後に著者が書く『明日のコミュニケーション』『明日のプランニング』『ファンベース』『AIに選ばれ、ファンに愛される』などにも一貫して通底している。これらの著作を通して読むことで、より深い理解がえら得るのは間違いない。

情報の溢れかえる時代において、生活者にいかにすればメッセージが届くか、常に考え続けないといけない。

このブログを書いてる人
早川 朋孝 ECコンサルタント
Dx、AI活用、データ分析、マーケティング、会計などワンストップで御社EC業務を支援します。特にAPIの扱いが得意で、20年の経験とAPIを組み合わせての提案は、他社は簡単に真似できません。
プロフィール
EC業務のDxの相談のります
趣味は読書、ピアノ、マリノスの応援など

EC運営のRPAを支援します

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